【小児科看護師・保健師監修】子どもの胃腸炎 受診のことから注意すべきことまで
2022.03.27
コラム
保育園に入ったら、必ずといっていいほどかかってしまうのが「胃腸炎」です。
夜中に突然吐くこともあれば、ゆるいうんちが続くことも…。
通常は、6月や11月に多い疾患ですが、コロナ禍においては季節に関係なく流行している印象があります。
重要!!
コロナウイルス対策でアルコール消毒は主流になっていますが、ウイルス性胃腸炎にアルコール消毒は効果がありません!!
胃腸炎の場合の小児科受診について
胃腸炎は、症状で診断されることが多いです。
ノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなど、ウイルスによる感染性の胃腸炎は、便の検査をしなければ確定診断はできません。しかし、集団発生でない限り、ウイルスの原因がわかっても特効薬がないために検査をする意味がないのです。
医師によっては、「おなかのかぜ」と言われることも多いでしょう。
おなかのかぜ、消化不良、お腹が冷えたなど、さまざまな原因があるかと思いますが、感染性胃腸炎を否定するには検査するしかない、というのが現状です。
嘔吐や下痢があるときに小児科医へ伝えること
- 嘔吐や下痢の回数(普段と比べてどうか)
- 下痢の性状(泥状便、水様便、未消化便など)
- おしっこが出ているか
- 集団生活の中で、嘔吐や下痢の症状がある子どもがいるかどうか
胃腸炎で注意すべきこと
①脱水
子どもは、容易に脱水になってしまいます。程度にもよりますが、水分摂取してすぐに吐いてしまう場合には、早急に受診しましょう。
受診の目安やおうちケアについては下記ボタンより胃腸炎のページ(PDF52枚目/P100)を参考にしてください。
②おしりが荒れる
下痢の時には必ずといっていいほどおしりが荒れてしまいます。
おとなが想像するよりも痛いのですが、子どもはあまりそれを表現しません。
おしりを保護するために
・おしりふきをお湯で濡らして便をながすようにし、おさえるようにふきとる(洗面器などでおしりだけ洗うのもよいでしょう)
・おしりを保護する軟膏を塗る(受診した際に処方してもらうと安心です。ワセリンやプロペト、ヒルドイドでは保護しきれませんし悪化する可能性もあります)
保育園登園の目安
基本的に、保育園では「通常の生活ができる」状態での登園をお願いされることが多いです。
小児科で「行ってもいいですよ」と言われたとしても、以下のことを参考に登園しましょう。
- 普段通りの食事がとれているか(登園直前の朝食だけでは判断できません。前日から普通食が問題なくとれるようになっているかがポイントです)
- 普段通りの便の回数、性状であるかどうか
- 遊べる元気があるかどうか
※保育園や自治体によっては、登園許可意見書が必要な場合があります。
なかなか下痢が治らないとき
元気があって、食欲も戻ったけれど、下痢だけが続いている…そのようなお子さんも多くみられます。
腸内細菌が一度崩れてしまうと、なかなかもとの状態に戻らないということもあります。
乳児は、一時的に「乳糖不耐症」になっている可能性もあるので、小児科医に相談して処方してもらうか、乳糖不耐用のミルクに変えてみるのも一つの方法でしょう。
食物アレルギーの可能性
離乳食開始後は、うんちの性状が日々変わることもあります。
注意しなければならないのは、初めてもしくは2回目の食材を摂取したあとに嘔吐や下痢が出た場合です。
2時間以内に嘔吐や下痢があったり、そのほかにじんましんや呼吸が苦しくなるようだったら食物アレルギーが疑われます(アナフィラキシーショックの可能性があるので受診が必要です)。
ご家族もご注意ください
ノロウイルスは汚物の処理が適切でないと空気中にウイルスが拡散してしまいます。
子どもから家族全員に感染してしまったというお話も多く聞きます。インフルエンザよりつらい…とおっしゃられたママパパもいらっしゃいました。
このような話を聞くと、「完璧に消毒をして、絶対にかからないようにしたい!」と思いますが、ウイルスは目に見えません。見えない敵と戦うことは、疲弊も伴います。可能な限りの対策をしつつ、それでもかかってしまったときには「免疫が少しついたかもしれない」と前向きに考えられるとよいかもしれませんね。
参考文献
監修・執筆
・保健師 水落 美紀さん
東京医科歯科大学医学部保健衛生学科看護学卒業。同大学病院、小児病棟・新生児集中治療室での看護師勤務。出産を機に退職後、3人の子育ての傍ら、小児科クリニックや皮膚科クリニックでの看護師勤務。現在は、保育園看護師・自治体の乳幼児健診業務に携わりつつ、「Tantdesourires」の屋号にて両親学級・子育て相談・子育てサポーター養成講座の講師など行っている。